医師は心臓病患者の記憶障害を見落としている

2014-02-04

ニューヨーク(ロイターヘルス) - 新規研究に登録した高齢の心臓病患者の約半数が記憶障害を有していたが、担当の心臓病専門医は大抵の場合、その障害を認識できていなかった。

「高齢の心不全患者の記憶障害を発見することは、非常に重要である」と同研究の主著者であるDr. Olivier Hanonはロイターヘルスへの電子メールに記した。

記憶障害は、心不全患者の服薬順守の程度に影響を及ぼす可能性がある、とBroca Hospital(パリ)のHanonは述べた。

Hanonらは、過去1年以内に心不全で入院し、かつ、2009年にフランスの開業心臓病専門医約300人のうち1人の治療を受けていた70歳以上の患者912人を調査した。

心臓病専門医は、4単語遅延再生記憶(four-word recall test)を実施する前に、担当患者の認知機能が正常かあるいは低下しているかのいずれかで評価を行った。

同スクリーニングに基づくと、心臓病専門医は46%の患者を記憶力低下と診断した。スクリーニングの前に心臓病専門医が記憶力低下を認識できていた割合はわずか12%であったことを、同研究者らはThe American Journal of Cardiology誌1月16日号オンライン版で報告した。

過去の研究でも、心臓病と記憶力低下が関連付けられている。例えば、心臓病の既往がある高齢女性は、健康な心臓を有する女性よりも記憶障害発症率が高いことが最近の報告1件で見出されている(2014年1月3日付ロイターヘルス記事を参照)。

心臓病専門医が患者の記憶障害を有意に過小評価していることが、他の過去の研究から示されている、とHanonらは報告した。

医師が記憶力低下を認識できていないことは広く報告されているが、見落とされることがあまりにも多く驚いている、とHanonは述べた。

「心臓病専門医が判断を誤ったのは主に、記憶障害を有するが『正常』に見えた患者であった」と同研究者は述べた。

認知機能が低下している人の方が服薬順守率および受診率が低く、奨励されたとおりに食生活を変更する可能性が低い、と同著者らは記している。スクリーニングを通じて記憶力の変化を早期発見することで、患者の治療計画順守を支援する戦略を心臓病専門医が策定できるようになるだろう、と同研究者らは述べている。

初診時、そしてそれ以降は年1回のペースで、心臓病専門医が思考能力および記憶力のスクリーニングを行うよう、Hanonは奨励した。

しかし、心臓病専門医が定期的に記憶力のスクリーニングを行うべきであるとの見解には賛同できない、とUniversity of California San Francisco Medical Centerの心臓病専門医であるDr. Liviu Kleinはロイターヘルスに語った。

自分の場合は、認知症患者に不相応だろうと考えられる侵襲的治療を実施する前には記憶障害のスクリーニングを行う、と今回の研究に関与しなかったKleinは述べた。

こうした例を除けば、かかりつけ医が記憶障害のスクリーニングを行うべきだと確信している、と同氏は述べた。

「我々は心臓病専門医として、心臓の問題に対処するための訓練を受けている。他の問題に対処するための訓練は受けていない」と同氏は述べた。

心臓病専門医が認知機能障害の検査を行うことが期待されているのであれば、うつ病および他の疾患のスクリーニングも行わなければならなくなる可能性がある、とKleinは述べた。

「そうなれば、30分間の心臓病の診察を受けに来た患者が3時間費やさなければならないことになる。患者は本当に嫌がるだろう」と同氏は述べた。

しかし、必ずしもかかりつけ医が思考能力および記憶力のスクリーニングを行っていない可能性もある。一般開業医のうち、患者の軽度認知機能障害を認識しているのはわずか11〜12%であると2010年のドイツの研究で見出されたことが、Hanonの論文で指摘されている。

心不全の重症化に伴って記憶障害も重症化することが、今回の研究から示された。ただし、この関連性は、異なるステージの心不全患者間で教育、運動習慣、うつ病および他の疾患に差があることで、少なくとも部分的に説明できると考えられる。

それぞれの被験者は、平均で4種類以上の心臓病治療薬を服用していた。治療によって記憶力の低下に差が生じるわけではないことを同著者らは見出した、とHanonは述べた。しかし、特定の抗うつ薬によって認知機能が損なわれたことを同研究者は除外できなかった。

心血管系の薬剤を製造しており、同研究に資金提供も行ったイタリアの製薬会社Menariniから謝礼金を受け取っていることを、Hanonおよび他の著者6人中5人が報告している。

SOURCE: http://bit.ly/1jACVN8
Am J Cardiol 2014.