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当世ニッポンたばこ事情

医療・健康
2022.12.15

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喫煙者はマイノリティー

令和元年の「国民健康・栄養調査」によると、習慣的に喫煙をしている人は全体では16.7%。男性27.1%、女性7.6%でした。10年前は40%近くの男性が喫煙していましたが、令和元年では30%弱となり有意に減少しています。もともと喫煙者が男性ほど多くないため、減少の幅は目立ちませんが、女性も10年前に比べ3.3ポイント減少しています。このような調査からもわかるように喫煙者こそマイノリティー。現在はたばこを吸わない人たちが主流派となり世論を形成しています。

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現在も習慣的に喫煙している人は、30-60歳代の男性でその割合が高く30%を超えています。そもそも高度成長期の只中にあった昭和41年の成人男性の喫煙率は83.7%! 成人男性が10人集まれば、8人は紫煙をくゆらせていたことになります。当時は「分煙」などの意識もなく、会社ではデスクでタバコを吸いながら仕事をするのが当たり前でしたが、現在ではたばこを吸うためには離席をしなくてはなりません。そこで勤務中の喫煙による労働時間のロスを試算したものがあります。その試算によると「喫煙による労働時間のロスは年間約25万円相当」となっています1)

以下の条件で試算されています
1 勤務時間(実働7時間)で、1時間に1本のたばこを吸う=1日5回離席する
2 1回の喫煙時間を7分=1日35分間離席する
3 平均報酬月額28万円、残業代は1時間2080円


リラックスするはずの喫煙であっても、「離席時間が長い」などと上司や同僚たちから思われていたらと考えるとむしろストレスになりますね。

また、婚活アプリ「マッチアラーム」が2015年9月4日〜7日にかけて同アプリの会員(20・30代の独身男女3,367件)を対象に行ったアンケートによると、喫煙者は恋愛対象にならないと答えたのが、男性では53.7%、女性では46.5%でした。この調査から時間が経ち、ますます嫌煙ムードは高まっています。恋愛受難時代の昨今、「喫煙者」というだけでマイナスからのスタートになるというのはつらいものがありますね。

分煙化の徹底によって

2020年、改正健康増進法の施行を機に「分煙化の徹底」が図られています。原則、病院や学校では敷地内全面禁煙となり、企業でも屋内全面禁煙とし、喫煙場所は屋外に設置するなどの対策が求められます。飲食店なども同様で、たばこの煙が流出しない「喫煙専用室」を設置しなくてはなりません。ますます喫煙環境は狭められてきたといわざるを得ません。
喫煙者にとっては肩身が狭い時代になったと思われるかもしれませんが、これはたばこを吸わない人がたばこによる健康被害を受けないためには必要な対策です。

たばこを吸っている人が吐き出す煙、手に持ったたばこや灰皿に置かれたたばこから立ち昇る煙、これらにもニコチンやタールなどの多くの有害物質が含まれています。たばこを吸う意思などさらさらない人が、周囲の人からたばこの煙を浴び、それを吸わされてしまうことを受動喫煙といいます。「ヘビースモーカーの夫をもった女性は肺がん死亡のリスクが約2倍である」という報告がイギリスの医学雑誌に掲載されています。

受動喫煙と病気発症との因果関係が推定される証拠が十分であると判定されたものに、肺がん、虚血性心疾患、脳卒中、乳幼児突然死症候群(SIDS)があります。いずれも生命を脅かす病気です。たばこの健康被害の研究報告2)によると、日本では年間約1万5千人が、受動喫煙が原因と考えられる病気で死亡していると推計されています。

加熱式たばこは健康被害が少ない?

近年、専用の道具を使って喫煙する加熱式たばこというものが登場しました。令和元年の「国民健康・栄養調査」によると、喫煙者のうち加熱式たばこを使用している人は、男性で27.2%、女性で25.2%と紙巻たばこを吸い続けている人のほうが多数ですが、若い世代では加熱式たばこの使用者が増えています。
加熱式たばこは紙巻たばこに比べて煙の量が少ないので、健康被害は少ないのではないかと考えられていますがニコチンは含まれています。種類によってその含有量は異なりますが、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒドやアクロレイン等の発がん性物質が検出されています3)。加熱式たばこに含まれるこれらの物質が私たちの健康にどの程度影響を及ぼすのかは、まだ十分な研究が行われていないため現時点ではわかりません。
加熱式たばこから発せられる蒸気には、紙巻たばこと同様にニコチンや発がん性物質が含まれていることから、煙が少なくても受動喫煙に対してもこれまでと同じように注意をしていく必要があるでしょう。

1)全国健康保険協会 千葉支部「禁煙推進プロジェクト」資料
2)片野田耕太. 厚生労働科学研究費補助金 たばこ対策の健康影響および経済影響の包括的評価に関する研究 平成27年度報告2016.
3)Bekki K, Uchiyama S, Ohta K, Inaba Y, Nakagome H, Kunugita N. Carbonyl compounds generated from electronic cigarettes. International journal of environmental research and public health 2014; 11(11): 11192-200.

参考
厚生労働省「e-ヘルスネット[情報提供]」,喫煙
がん情報サービス,たばことがん

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