貧血とかき氷
かき氷といえば夏を代表するスイーツ、最近は旬の高級フルーツを存分に使ったリッチなものやパクチーをつかった個性的なものまでバラエティーに富んでいます。そんなかき氷の歴史は平安時代にまでさかのぼるとか。清少納言が書いたエッセイ『枕草子』にも「削り氷(けずりひ)」という名称でかき氷は登場します。そんな伝統的かつ進化が止まらないかき氷ですが、氷を食べたくて食べたくて仕方なくなる「氷食症」という病気があるのをご存じですか。それは多くの女性を悩ます貧血とも関係があるそうです。
鉄欠乏性貧血と日本人女性
体内の鉄の貯蔵量が減少すると骨髄でつくられる赤血球の数が減少し、「鉄欠乏性貧血」となり、次のような症状が現れます。
・体がだるい
・軽度な運動で息切れがしたり、顔が青白くなる
・重度の場合は、氷食症
WHO(世界保健機関)の基準では、赤血球に含まれるヘモグロビン値が、男性では13g/dL未満、女性では12g/dL未満の場合に貧血と診断されます。
厚生労働省が行った国民健康・栄養調査(平成21年)では、日本女性の40%、とくに20代~40代の女性の約65%が「貧血」もしくは「かくれ貧血」であることがわかります。この世代は月経があるため、鉄不足になりがちです。「体がだるい」などの症状は、寝不足、猛暑の影響などによっても感じるため、あまり大ごとに考えていない人が多いのではないでしょうか。
日本で1981年から1991年にかけて約3,000人の女性を対象に鉄欠乏性貧血に関する調査を行いました。その結果、約半数の女性が鉄欠乏であることがわかりました。この調査以降、大規模な調査は行われていないうえ、日本では鉄欠乏性貧血に関する積極的な対策を講じてこなかったため、「現在も日本の女性の多くが鉄欠乏性貧血を起因とするさまざまな症状に悩まされているだろう」と調査を行った医師は指摘しています。
鉄欠乏性貧血を改善するには
鉄欠乏性貧血と診断されたら、病状の程度によって鉄剤などが処方されますが、薬だけに頼ることなく、鉄分の多い食材を積極的に食べるなど、日ごろの食事を見直すことも必要です。それは「かくれ貧血」の方々にもいえることです。
私たちの体のなかでは、1日に成人の男性ならば約1mg、女性では約0.8mgの鉄が損失します。また女性は月経によりさらに多くの鉄が損失しています。この損失した分の鉄を食事などから補わなければなりません。厚生労働省がまとめた「日本人の食事摂取基準 2020年版」では、20~49歳の成人男性では7.5mg、月経のある成人女性では10.5mg(月経のない女性は6.5mg)の鉄を1日の食事から摂取することが推奨されています。
鉄分の多い食品には、豚のレバー、牛のヒレ肉、あさりの水煮などの動物性食品と、納豆やがんもどき、ホウレンソウなどの植物性食品があります。レバーなどの動物性食品に含まれるものをヘム鉄、ホウレンソウなどの植物性食品に含まれるものを非ヘム鉄といい、ヘム鉄は非ヘム鉄に比べ、3~10倍吸収率が高いといわれています。
やや吸収率の劣る非ヘム鉄の食品を食べるときには、ビタミンCが豊富な食品を一緒に食べることで吸収力はアップします。レバニラ炒めにホウレンソウを加えてみると、ヘム鉄+非ヘム鉄+ビタミンC(ニラはビタミンCが豊富)で、鉄を効率よく摂取できそうですね。
貧血が心配な方は、ぜひ「鉄活」してみてください。
厚生労働省eヘルスネット
『DSM-5 精神疾患の分類と診断の手引』日本語監修:日本精神科学会(医学書院)
内田立身,日本内科学会雑誌 第99巻 第6号:1194-1200,2010