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「化粧」がもたらす効果~認知機能の改善にも

医療・健康
2023.2.20

国内の認知症の人の数は年々増加しており、2025年には約700万人(65歳以上の高齢者の約5人に1人)に達すると見込まれています※1

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医療・介護の現場で注目されているさまざまな療法

認知症には、治療可能なものと根本的な治療がないものがあります。そのなかで認知症の約7割を占めるアルツハイマー型認知症は、根本的な治療法がないタイプの認知症のひとつ。根本的な治療法がない認知症は、予防や軽度の段階で進行を遅らせることが大切です。

予防や軽度の段階で進行を緩やかにする効果があるものについては、さまざまな取り組み、研究が進められています。たとえば、運動習慣や定期的な身体活動、聴力低下のケア、生活習慣病の治療、禁煙、積極的な社会参加などがあげられます。また、実際に認知症の人を対象にした非薬物療法(薬以外の治療法)として、運動療法、音楽療法、回想法、レクリエーション療法などを取り入れている医療機関や介護施設もあります。

認知症の人やその介護者を対象にした主な非薬物療法

運動療法、音楽療法、回想法、レクリエーション療法など

こうした活動(療法)は、認知機能の改善や維持、認知症に伴う行動・周辺症状(BPSD)、日常生活動作(ADL)、社会活動の改善・維持などが期待できます。認知症の予防や進行を緩やかにするだけでなく、日常生活動作や社会活動への参加につながることで、最期までその人らしく生活するための助けとなるものでもあるといえるでしょう。

見た目の美しさがもたらす前向きな気持ち

認知機能の低下によって、外出をすることが怖くなったり、人と会うのが不安になったりする人は少なくありません。「できない」ことが増えていく不安やショックから気分も落ち込み、さらに社会的に孤立していく悪循環に陥ることもあります。こうした悪循環を防ぎ、生活をより豊かなものにする取り組みのひとつに化粧療法があります。

お気に入りの洋服を着て、髪型を整え、髭を沿ったり化粧をしたりして外出することは、年齢や病気の有無にかかわらず幸福な気持ちになるものではないでしょうか。とくに人と会うときには、「よりきれいな自分でいたい」という気持ちが強くなるものです。化粧療法は、そんな前向きな気持ちを引き出すもので、幸福感を高め、抑うつや不安などの改善効果が期待されています※2

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介護施設に入所している認知症の高齢女性に対して化粧療法を行い、その効果を調べた研究によると、化粧開始直後から行動・周辺症状(BPSD)の改善効果がみられ、開始3か月後の認知機能にも改善が認められたといいます※2。とくに見た目年齢が若返ることで喜びの感情が強くなり、化粧前後での喜びの差が大きい人のほうが日常生活動作の改善効果が高い傾向がみられたとのこと。化粧をすることが、社会との交流のきっかけになるのではないでしょうか。

化粧療法はタッチングによる効果も

病気やケガの処置、ケアをすることを “手あて”といいますが、手をあてることはその人の不安を取り除いたり、癒したりする効果があるといわれてきました。化粧に限らず、認知症の人にやさしく触れることも安心感を与えることに役立つとされていますが、これは認知症の人以外でも、エステサロンで肌にやさしく触れられたときに感じるぬくもり、心地よさから、リラックスできる人が多いことと同じと考えればわかりやすいかもしれません。

同じように、医療従事者や介護職員、家族などがやさしく顔に触れながらスキンケアやメイクをしてあげることで、化粧を通じたコミュニケーション、タッチング、見た目がきれいになるなどの相乗効果が期待できます。認知症の非薬物療法の効果についてはまだ明らかになっていないものが多いものの、化粧療法についても研究や実践が進められています。医療機関や介護施設だけでなく、自宅でもできるものとして、さらに注目されていくのではないでしょうか。

※1 厚生労働省:認知症施策推進総合戦略(新オレンジプラン)〜認知症高齢者等にやさしい地域づくりに向けて〜
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12300000-Roukenkyoku/nop1-2_3.pdf
※2 岡山大学:プレスリリース「認知症患者さんに対する化粧療法の早期効果を臨床試験で証明!~化粧療法直後から情動機能改善、AI解析で見た目が若返り、喜びが増加~」
https://www.okayama-u.ac.jp/tp/release/release_id817.html


参考
厚生労働省:知ることからはじめようみんなのメンタルヘルス 認知症
https://www.mhlw.go.jp/kokoro/know/disease_recog.html

森千鶴ほか:タッチングのよる精神・生理機能の変化.山梨医大紀要,17:64-67,2000.
https://lib.yamanashi.ac.jp/igaku/mokuji/kiyou/kiyou17/image/kiyou17--064to067.pdf

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