新緑の季節、毛虫にご用心!
新緑の季節になり、柔らかな日差しの中で散歩をするのが心地よい日々が続いています。しかし、この時期の屋外活動で注意しなければならないのが「毛虫」です。5月下旬から9月にかけて毛虫の活動が活発になり、チクっと感じた時にはすでに毛虫に刺されているなんてことも・・・。毛虫対策、一体どのようなことを行えばよいのでしょうか。
すべての毛虫に毒がある・・・というわけではない!?
「毛虫の毛=毒がある」と思い込んでいる人は少なくありませんが、実際にはすべての毛虫が毒を持っているわけではありません。実は毒を持つ毛虫のほうが少数派、全体の20%程度といわれています。そんな少数派の毛虫に出合ってしまい、有毒毛に触れてしまった場合にだけ皮膚炎(毛虫皮膚炎)が生じます。
毛虫が持つ有毒毛には毒針毛(どくしんもう)と毒棘(どくきょく)があります。毒針毛は主にドクガ類(ドクガ、チャドクガなど)やカレハガ類(マツカレハ、タケカレハ)、毒棘はイラガ類(イラガ、ヒロヘリアオイラガなど)の幼虫が持っています。
毛虫に直接触れなくても、有毒毛が付着した葉や枝に触ったり、風によって飛ばされた毛が肌に付着したりするだけでも皮膚炎を起こす場合があります。抜け殻や死骸にも有毒毛は付着しているため、うっかり触れてしまっただけでも皮膚炎を引き起こす可能性があります。
毛虫皮膚炎の症状
ドクガ類の毒針毛は長さ0.1〜0.2mmほどと極小サイズですが、その数はなんと幼虫1匹あたり数十万〜数百万本以上ととてつもない数! 通常、毒針毛に触れ数時間経つと、激しいかゆみや赤みを伴う蕁麻疹のような発疹が現れます。その際、患部を掻いたり擦ったりしてしまうと、毒針毛が他の部位へと広がってしまい、広範囲にわたって皮膚症状が生じることがあります。
一方、イラガ類の毒棘は触れた瞬間にピリピリした激しい痛みと赤みが出現するのが特徴です。痛みや赤みは1〜2時間程度で一旦治りますが、翌日同じ部分が赤く腫れてかゆみを生じることがあります。
毛虫に刺されてしまったら
毛虫に刺されたと気づいたら、掻いたり擦ったりは禁物です。患部を素手で触れないように注意しながら、ガムテープなどの粘着テープで付着した毒毛を出来るだけ早く取り除きましょう。流水で患部をしっかりと洗い流すことも重要です。かゆみが激しい際は、患部を冷やすことで症状を和らげることができます。
かゆみや赤みが軽度の場合は、市販のかゆみ止めでも対処することができますが、赤みやかゆみが引かないときは、ステロイド外用薬での治療が必要になります。虫さされは通常の場合、1〜2週間程度で改善しますが、症状が強い場合はアレルギー反応を抑える抗ヒスタミン薬やステロイドの内服が必要になるため、いつまでも症状が治らないときには自己判断で様子を見るのではなく、医療機関を受診するようにしましょう。
毛虫の毒に対するアナフィラキシーショックの症状として、頭痛や吐き気、めまい、息苦しさなどの全身症状があります。このような症状が現れたときや、患部と離れた部位にも蕁麻疹のような発疹が生じた場合は、命に関わるおそれがあるためすぐに医療機関を受診してください。
毛虫に刺されて、つらい思いをしないために
ドクガ類の代表格であるチャドクガの幼虫は、ツバキやサザンカなどツバキ科の植物を好みます。そのため、活動が活発である5月下旬から9月にかけては、公園等でツバキやサザンカに近づかないように注意しましょう。草木の手入れ等を行う際は、長袖・長ズボン、軍手、帽子などを着用し、肌の露出をできるだけ減らすことで、毛虫に刺されるリスクを減らすことができます。衣服の素材として毒針毛が付きにくいナイロン性の素材を着用するとよいでしょう。
衣類に毛虫がついたら、洗濯する際にも注意が必要です。洗濯をする前に掃除機や粘着性のカーペットクリーナー等を使って、できる限りの毒毛を取り除きましょう。その後50度以上の熱湯につけて毒毛の効果を弱めたのち、毛虫がついてしまった衣類のみ単体で洗濯します。他の衣類とともに洗ってしまったら、洗濯槽の中で毒毛が広がり他の衣服に付着してしまうので、必ず単体で洗うことが重要です。
公益社団法人日本皮膚科学会 「皮膚科Q&A 虫さされ」
https://www.dermatol.or.jp/qa/qa16/q12.html