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新型コロナウイルス感染症第10波到来か? ウィズコロナ時代で気をつけるべき「心不全パンデミック」とは

医療・健康
2024.1.30

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新型コロナウイルス感染症患者数は9週連続増加

感染症法上の分類で2類相当であった新型コロナウイルス感染症は、昨年5月に季節性のインフルエンザと同じ5類に移行し、外出制限や自宅療養などが求められることはなくなりました。いわゆるパンデミックといわれる流行期は収束したとみなされています。

しかし、2023年末から2024年1月にかけて、感染者数の急激な増加が全国各地で認められており、専門家からは流行の第10波が到来したのではないかとの声も聞かれます。全国の1医療機関あたり患者報告数は、2023年12月最終週には5.79人でしたが、2024年1月8日~1月14日には8.96人、1月15日〜1月21日には12.23人(2024年1月26日(金)現在の速報値)と増加の一途をたどっています。入院患者は昨年末のほぼ2倍となりました。また、現在主流となりつつあるのは、新たな変異株JN.1であり、東京都の発表によれば、1月第1週の時点で既に55.6%を占めています。

心臓への持続的な影響が明らかに

このように、次から次へと生まれる新型コロナウイルスの変異株との闘いは今後も継続していくと考えなければならないでしょう。そんな中、昨年末、理化学研究所と京都大学の共同研究の結果が公表され、気になる報告がありました。新型コロナウイルスへの持続的な感染が、心不全リスクを高める可能性があるというのです。本研究では、iPS細胞を使ってヒトの心臓組織を作製し、さまざまな実験を行いました。その中で、心臓組織を低酸素状態にしたところ、心機能の低下が起こりやすいことが確認されました。この状態が該当する疾患は、虚血性心疾患、すなわち動脈硬化や血栓などが原因で心臓の血管が狭くなり、心臓に酸素・栄養が行きわたらず、前胸部などに心臓の痛み、圧迫感といった症状を生じている状態です。

新型コロナウイルスは、細胞膜に存在するタンパク質である「アンジオテンシン変換酵素2(ACE2)」を介して細胞に感染します。心臓にはACE2が他の臓器に比べて多く存在し、さらに心不全患者では、心筋細胞においてACE2が心不全でない人よりも多いことがいくつもの研究で報告されています。すなわち、心臓に疾患がある場合、そもそも新型コロナウイルスに感染しやすい可能性があるといえるのです。

新型コロナウイルス感染症が治癒した患者100例を対象に、心臓MRIの検査をしたところ、78%に異常が見つかり、60%に持続する炎症所見を認めたとする研究報告もありました。これは、コロナ禍が始まって間もなくの2020年に発表された研究で既に指摘されていたことです。これらを総合的に判断すると、今回のパンデミックにより、今後、新型コロナウイルスの持続感染に起因する心不全リスク人口が増加することが危惧されます。

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今後のさらなる研究が待たれますが、心臓に疾患のある人や新型コロナウイルス感染の際、心筋炎などの合併症を経験した人は、継続的なモニタリングを心掛けたほうがよいかもしれません。

参考

https://www.mhlw.go.jp/content/001197418.pdf
https://www.hokeniryo.metro.tokyo.lg.jp/kansen/corona_portal/info/monitoring.files/0125.pdf
https://www.riken.jp/press/2023/20231223_1/index.html
JAMA Cardiol. 2020 Jul 27:e203557. doi: 10.1001/jamacardio.2020.3557.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32730619/

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