ウィズコロナの旅行提案
健康を意識した「ヘルスツーリズム」
新型コロナウイルスの流行により、以前よりも気軽に旅に出ることは難しくなりました。このような状況下で注目されているのが、健康に重きを置いた旅行スタイルであるヘルスツーリズム。ウィズコロナへと移行中の昨今、健康増進を目的とした旅はますます需要の高まりをみせそうです。
ヘルスツーリズムとは？
ヘルスツーリズムは日本ヘルスツーリズム振興機構によると、「健康・未病・病気の方、また老人・成人から子供まですべての人々に対し、科学的根拠に基づく健康増進（EBH: Evidence Based Health）を理念に、旅をきっかけに健康増進・維持・回復・疾病予防に寄与する」ものと定義されています。
日本でヘルスツーリズムが本格的に始まったのは、2007年に施行された「観光立国推進基本法」がきっかけです。しかし日本ではすでに奈良時代から、湯治の習慣が存在しており、温泉旅行は日本におけるヘルスツーリズムの先駆けであるといえるでしょう。
ヘルスツーリズムは大きく2つの領域に分けられる
ヘルスツーリズムは、健康増進を目的とした「疾病予防」領域と、病気の早期発見や治療を目的とした「メディカルツーリズム(医療インバウンド)」領域に分類できます。
まずは疾病予防に該当する活動について詳しくみていきましょう。
ヘルスプロモーションは、人びとが自らの健康をコントロールし改善できるようにするための過程として、主に一般的な健康づくり全般を指します。疾病予防のなかでも広く取り組まれているもので具体的な活動として、日本ウオーキング協会が実施している「寅さんウオーク」などがあります。
次に特定疾病の予防は、メタボリックシンドロームやメンタルヘルス対策などの特定疾患の予防を目的としたものです。とくに企業の福利厚生等の施策として注目されており、糖尿病の重症化予防を目的とした「宿泊型新保健指導プログラム（スマート・ライフ・ステイ）」
最後にウェルネスツーリズムは、旅先でのスパ、ヨガ、瞑想、フィットネス、ヘルシー食、レクリエーション、交流などを通して、心と体の健康に気づく旅、地域の資源に触れ、新しい発見と自己開発ができる旅のことをいいます。個々人がリフレッシュや原点回帰し、明日への活力を得ることを目的としています。
つづいてメディカルツーリズム（医療インバウンド）に該当する活動ですが、日本においては主に訪日外国人旅行を指す領域です。訪日外国人に対し、日本の先進医療を提供するツーリズムですが、医療を受けることが渡航の一番の目的のため、観光性が低いことが特徴です。
日本のヘルスツーリズムへの取り組み
日本では2018年に経済産業省が主導となり、「旅と健康」という新しい視点でサービスの品質を客観的に評価する「ヘルスツーリズム認証制度」が立ち上がりました。2021年時点で43件のプログラムが認定を受けています。
ここで一つヘルスツーリズム認証プログラム数が多い、山形県上山市の事例を紹介します。上山市（以下同市）は長期滞在型の温泉健康保有地を目指した2008年度の内閣府「地方の元気再生事業」への参加をきっかけに「上山型温泉クアオルト事業」に取り組んでいます。クアオルトとはドイツ語で健康保養地、療養地を意味しています。
同市がはじめに取り組んだのは、気候性地形療法
そのほかにも地元食材を生かした商品の開発や、医療機関と連携した精神科デイケアの受け入れにも取り組んでおり、健康保養地という考えのもと、滞在するだけで心も体も元気になるまちづくりを進めています。
コロナ禍による長引く自粛生活に、何かしらのストレスを感じている人が多いといわれる昨今。感染の流行が落ち着いてきたら、心身の健康を目的とした旅に出かけてみてはいかがでしょうか。
※1 厚生労働省 宿泊型新保健指導（スマート・ライフ・ステイ）プログラム
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/sls/index.html
※2 上山市温泉クアオルト協議会
https://www.city.kaminoyama.yamagata.jp/site/kurort/
特定非営利活動法人 日本ヘルスツーリズム振興機構
https://www.npo-healthtourism.or.jp/about/
ヘルスツーリズム研究所
https://www.tourism.jp/project/hti/
日本ウオーキング協会
https://www.walking.or.jp/
ヘルスツーリズム認証委員会
https://htq.npo-healthtourism.or.jp/
日本クアオルト協議会
https://japankurort.jp/
Typology of tourism in relation to health, medical and wellness tourism. Source: Adapted from USAID (2008, p. 18)
