2025年、日本初開催!デフリンピックとは?
2025年11月に東京で開催されるデフ(耳が聞こえない)アスリートを対象とした国際スポーツ大会「デフリンピック」の開会式まで1年を切りました。そこで今回はデフリンピックとはどのような大会なのか、競技を行う上でアスリートたちが不利にならないようどのような工夫がされているのかなどについて紹介します。
デフリンピックとはどのような大会?
デフリンピックとは、英語でろう者を表す「Deaf」とオリンピック(Olympics)を組み合わせて作られた造語で、耳の聞こえない・聞こえにくいアスリートのためのスポーツ大会のことです。オリンピックと同じように4年ごとに夏季大会と冬季大会がそれぞれ行われます。直近では2022年5月にブラジルのカシアス・ド・スルで夏季大会が、2019年12月にイタリアのヴァルテッリーナで冬季大会が行われました。「東京2025デフリンピック」は日本で初開催となるもので、1924年にパリで第1回デフリンピックが行われてから100周年の記念大会です。
デフリンピックでは、選手たちが耳の聞こえない状態でお互いに公平にプレーするために、会場に入った時点で、聞こえをサポートする補聴器などの器具を身につけることができません。そのため、デフリンピックに出場するには、以下の2つの条件が設けられています。
① 補聴器などを外した状態で、耳で音を聞き取る力が55デジベル
② 各国のろう者スポーツ協会に登録されている選手で、選考競技会で記録や順位などデフリンピックへの出場条件を満たした人
※音の大きさはデシベル(dB)で表し、数字が大きいほど音が大きくなります。約60dBが普通の会話声、約70dBが電話の音、100dB以上が車のクラクション音やジェット機の音です。
デフリンピックで行われる主な競技
デフリンピックで行われる競技は、オリンピック同様に陸上や水泳、球技など多岐に渡ります。東京2025デフリンピックでは、以下21競技が行われます。
【東京2025デフリンピックで行われる競技】
陸上、バドミントン、バスケットボール、ビーチバレーボール、ボウリング、自転車(ロード)、自転車(マウンテンバイク)、サッカー、ゴルフ、ハンドボール、柔道、空手、オリエンテーリング、射撃、水泳、卓球、テコンドー、テニス、バレーボール、レスリング(フリースタイル)、レスリング(グレコローマン)
これらの競技は、聞こえる人と同じ国際ルールに準拠して行われます。耳が聞こえないことは見た目から分かるものではありません。そのため、耳が聞こえないことは“目には見えない障害”といわれています。とくにスポーツをするうえでは、打球音が聞こえないなど、聞こえる人に比べて情報量が少なくなることから、さまざまなハンディが生じています。では、デフリンピックでは音が聞こえない選手たちはどのようにして、コミュニケーションをとっているのでしょうか。
音の代わりとなる“視覚保障”
デフリンピックでは各競技で、選手たちが不利にならないよう音の代わりに目で分かるさまざまな工夫(視覚保障)が行われています。例えば陸上競技の場合、選手たちはスタート音が聞こえないため、以前はスタータの動きや近くの選手を目視してスタートを切っていました。そのためスタートの合図を目視するために、選手たちは顔を上げた体勢でスタートに備える必要があり、非常に不利な体勢でのプレーを余儀なくされていました。
そこで開発されたのが、スタート音を光の合図で知らせる装置「スタートランプ」です。スターターのピストルと連動し、オン・ユア・マークス「赤」、セット「黄」、号砲「緑」と色の変化によって選手に合図を送ります。この装置を選手の視線に配置することで、聞こえる人と同じ条件でスタートを切ることが可能になりました。スタートランプのほかにも、審判の合図の際は、笛だけではなく旗を用いるなど、選手たちが不利なく全力で競技に臨めるよう工夫がなされています。
デフリンピックの認知度は、パラリンピックの認知度と比較してもまだまだ十分とはいえない状態です。日本初開催で、100周年の節目の大会である「東京2025デフリンピック」。ぜひ世界各国のアスリートたちの勇姿をこの目に焼き付けましょう。
・東京2025デフリンピック大会情報サイト
https://deaflympics2025-games.jp/main-info/about-deaflympics/
・一般財団法人 全日本ろうあ連盟
https://www.jfd.or.jp/