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イラストは何のためにあるのか

制作・IT
2023.8.16

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イラストの役割、イラストが伝えるもの

見渡せば私たちの周りにはたくさんのイラストがあふれています。
ファッション誌を開けばメイクアップ指南のイラストが、駅に貼られた観光ポスターにはイラストのご当地キャラクターがPRしています。そして工事現場では、ヘルメットを被り、頭を下げた作業員のイラストをよく見かけます。

そんなイラストの多くは、単独で何かを主張するというよりも、文章や広告の内容をより具現化する、印象を鮮明にするといった役割を担っています。各地のご当地キャラクターにしても、そもそもその地域を連想させる造形になっています。
つまり、イラストを制作するときには、イラストを見ただけでメッセージが明確になるように構図やタッチ、色合いなどのテイストにこだわるわけです。

下に同じ構図で描かれた4つのイラストがあります。
女性のドクターが患者さんに「一緒に病気に立ち向かいましょう」と語りかけていて、背後にはサポートする別のドクターとナースも描かれています。あなたが医療コラムの制作を任されたとき、次の4つからどれを選ぶでしょうか。

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【A】は輪郭線をあえて描かず、陰影も控えめなイラストです。ドクターは穏やかな表情をしていますが、患者さんの表情からはあまり気持ちは読みとれません。前面の2人と背後の2人の関係性は希薄ですが、おかげで前面の2人がクローズアップされています。

【B】はやや太めの黒い輪郭線を加えました。一人ひとりの存在感が際立ち、力強さが感じられる一方、【A】のイラストにあるソフトなイメージが薄らぎました。しかし、患者さんの表情が微笑んでいるので、ドクターと患者さんの関係性は良好! という印象を与えます。

最初の2つとイラストのタッチをがらりと変えたのが【C】と【D】です。

【C】は顔の表情などシンプルですが、ぬくもりが感じられる親しみやすいものになっています。患者さんの表情からはドクターに信頼を寄せていることが読み取れます。また、背後の人物をやや大きく描き、4人の服の色を2色にしぼったことでグッと焦点が明瞭になり、まとまりのあるイラストになりました。
【D】は4つの中で最も描きこんでいます。登場人物全員、生き生きとした表情をしています。いまにも動き出して声が聞こえてきそうです。

医療向けイラストに求められるもの その1 正確性

病気について書かれた記事やコラムには、聞きなれない言葉や聞いたことはあっても具体的なイメージと結びつかない言葉がでてくることがあります。
たとえば、便秘について書かれた記事を読んでいると、「大腸」と「直腸」という2つの言葉がでてきました。
「大腸? 直腸?」
「大腸ってどこなんだろう、どこからが直腸なんだろう」
などと疑問がわいてしまうと、記事を読んでもよくわからないし、そもそも読む気がなくなってしまうのではないでしょうか。そんなときに理解を助けてくれるのが、下のような説明イラストです。

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右は大腸のイラストです。大腸には上行結腸から直腸まで大腸内のそれぞれの場所に名前があることがわかります。直腸は大腸の中で最も肛門に近い場所にあります。
左のイラストでは消化管全体が把握できるので、便秘の記事を読みながら、口から取り入れた食物が食道を通過して、胃に入り消化されたのち小腸で栄養を吸収し、そこで残ったものが便として大腸を通過しながら最終的には肛門から排出されるということを理解する助けになるでしょう。
このように病気や治療法の説明に使うイラストに求められるのは、何よりも正確性です。

ただし、正確ならばよいというものでもありません。医学について素人である私たちにとっては、スーパーリアリズムで描かれた人体図はかえってわかりにくい場合があります。
右上のイラストでは、大腸の説明に特化するためにあえて小腸は描いていません。ときには省略化したりデフォルメしたりと、記事の内容への理解を助けるために表現を工夫します。

医療向けイラストに求められるもの その2 倫理性

医療イラストには倫理性が求められます。もちろん、それは医療向けイラストに限ったことではありません。しかしながら、世間では興味を引くために煽情的だったり刺激的だったりと奇抜なイラストを使うことがあります。それはPR効果としては成功を収めることもあるかもしれません。
しかし、病気や健康を扱う記事内では奇をてらったイラストは不要なのではないでしょうか。病気の記事をどのような人が読むのかを考えてみましょう。病気かもしれないと不安に思っている人、病気治療中の人、病気の家族や友人を心配している人、そのような人たちが目にしたときに悲しい思いをさせるような表現は避けるべきだと思うのです。

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