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秋の花粉症

医療・健康
2022.9.15

毎年稲穂の収穫の時期になると、なんとなく目や鼻がかゆいといった症状が出る方も多いのではないでしょうか。その症状「花粉症」によるものかもしれません。「春でもないのに花粉症?」と思われるかもしれませんが、キク科のブタクサやヨモギ、イネ科のカモガヤといった草本植物による花粉は秋口に飛散のピークを迎えます。秋の花粉症について、特徴や症状についてまとめます。

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春花粉と秋花粉の違い

スギやヒノキといったいわゆる春花粉は、飛散のピークを迎えると連日飛散状況がメディアで報じられるなど、たびたび話題に挙がります。一方で、ブタクサやカモガヤなどは日本中どこにでも生息していますが、秋花粉はほとんど注目されることはありません。その理由として、飛散距離の違いがあります。

スギやヒノキは風によって花粉を遠くに運ぶ植物・風媒花に分類され、背の高いところから風に乗って運ばれた花粉は、時には山間部から数百キロ離れた場所まで飛散することもあります。一方、ブタクサなどの草本植物は背が低い植物が多いため、遠方まで飛散することはほとんどありません。そのため、同じ地区であっても雑草が多く点在している河川敷周辺では多くの花粉が舞うのに対し、比較的雑草の少ない場所では花粉の飛散があまり確認されないなど、環境によって影響に差が出るのも秋花粉の特徴のひとつです。

秋花粉の具体的な症状は?

秋花粉に代表されるブタクサは、花粉の粒子がスギ花粉の半分程度の大きさしかありません。粒子が小さい分気管支や肺に入り込みやすいため、花粉症の症状とされる目のかゆみや鼻炎症状に加え、花粉が喉の奥に入り込むことによって、喘息と似たような症状を引き起こす場合があります。風邪と症状が似ているため、見落とされることの多い秋花粉の症状ですが、「目や鼻がかゆく、咳の症状が治まらない」といった症状がある場合は、花粉症の可能性もありますので、一度耳鼻科などに相談してみるといいでしょう。

花粉-食物アレルギー症候群にも注意!

また、花粉症の症状のある人が気を付けなければならないのが花粉-食物アレルギー症候群(pollen-food allergy syndrome: PFAS)です。PFASは口腔アレルギー症候群とも呼ばれ、花粉のアレルゲンと一部の果物や野菜に含まれるアレルゲンの構造が似ていることがアレルギー症状を引き起こす原因とされています。花粉症の症状のある約10%の人が合併し、生野菜など特定の食物を口にした後、遅くても1時間以内に唇がはれたり、口の中がかゆくなったりなどのアレルギー症状が出ます。重症の場合はアナフィラキシーショックを起こす場合もあります。

PFASの原因とされる食物としてイネ科の花粉に反応する人では、トマト、メロン、スイカ、オレンジなど、ヨモギやブタクサの花粉に反応する人ではメロン、スイカ、キュウリ、バナナなどにアレルギー症状が出ることが報告されています。PFASの基本治療としては、症状の原因となる果物や生野菜を摂取しないことです。果物や野菜は加熱処理によってアレルゲンが減弱し摂取可能になる場合が多いですが、過去にPFASの症状があった患者さんは、該当食物の摂取について医師と相談した上で、判断することが重要です。

アレルゲン・・・アレルギーの原因となる物質

自分でできる、秋花粉対策!

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ブタクサなど秋花粉の飛散状況はほとんどメディアで報じられることはありません。辛い症状に悩まされないためにも、自分自身で対策を講じていく必要があります。秋花粉の対策のひとつとしては「原因となる植物に近づかない」ことです。前述したように、草本植物による花粉が遠方まで飛散することはほとんどありません。そのため、自身の行動範囲内に症状の原因となる植物が存在するかを把握し、その場所を回避するだけでも症状緩和につながります。

また、春の花粉症時と同じく室内に花粉を持ち込まないことも大切になってきます。花粉症の症状のある方が草原や河川敷などに外出される場合は、比較的花粉の付きにくい木綿や絹といった洋服を選び、帰宅したら室内に入る前に玄関先で髪の毛や衣服をはたいてから、入るようにしましょう。

参考資料
・『鼻アレルギー診療ガイドライン 2020年版』日本耳鼻咽喉科免疫アレルギー学会/鼻アレルギー診療ガイドライン作成委員会編集(ライフ・サイエンス)
・『花粉症環境保健マニュアル 2022』環境省
・『食物アレルギー診療ガイドライン 2021』日本小児アレルギー学会(協和企画)
・『広辞苑 第七版』(岩波書店)

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