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睡眠不足と肥満の関係

医療・健康
2022.10.20

日本人の睡眠時間は、他国の人に比べてだいぶ少ないといわれています。1日24時間という限られた時間のなか、やることが多すぎるのかもしれません。また、真面目な性格が災いして、「今日中にしなくては!」と睡眠時間を削ってしまう人も少なくないのでしょう。真面目な人ほど頑張りすぎる傾向があるようです。そんな私たちは寝る間も惜しみ働いて健康を損なうリスクを抱えています。さらに、慢性的な睡眠不足は肥満を助長するとか!? 毎日痩せる思いで頑張っているのに逆に太ってしまうとは……なぜそんな理不尽なことが起こるのでしょうか?

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睡眠不足と肥満の関係

私たち人間は1日24時間というサイクルに合わせて、朝になれば目覚め、昼に活動し、夜になれば眠りにつき休息します。このサイクルは体内に組み込まれているもので「サーカディアンリズム(概日リズム)」といいます。活動する時間帯と休息する時間帯によって、体温や血圧、ホルモンの分泌などに変化が生じます。したがって、このサーカディアンリズムが狂うと私たちの生体リズムは大きく乱れてしまうのです。

サーカディアンリズムが狂わないようにメンテナンスをしているのが、時計遺伝子と呼ばれるものです。約20種類ある時計遺伝子は夜間に活性化しますが、時計遺伝子の1つであるBMAL1遺伝子には、脂肪を蓄積し、脂肪の分解を抑える作用があります。そのため、BMAL1遺伝子が活性化している夜間に食事をすると、太りやすいということになります。昼夜逆転の生活を送っている方、看護師や介護士、警備員など夜勤がある仕事に従事している方は、夜間の食事にご注意ください。

また、慢性的な睡眠不足が続くと、体内のホルモン分泌に影響を及ぼします。睡眠不足になると食欲を抑えるレプチンというホルモンが減少し、食欲を亢進させるグレリンというホルモンが増えることがわかっています。その結果、「夜遅くに食べてはいけない!」と思っていながら、ついつい食べ過ぎてしまうことがあります。

睡眠不足→肥満→生活習慣病

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睡眠不足だけでも健康を損ないやすいのに、さらに体重増加となると、いよいよ生活習慣病が気になってしまいます。実際に慢性的な睡眠不足の人では血糖を調整するインスリンの働きが鈍くなり、糖尿病になるリスクが高いことも知られています。睡眠不足、侮るべからず! ですね。

アメリカ・コロラド大学の研究によれば、睡眠不足が慢性化すると夕食後に間食をとりたくなるといいます。我慢できずにスイーツなどを食べてしまった結果、カロリー過多となり肥満につながるということがわかりました。同研究では、週末に寝だめをした場合、カロリー摂取に変化があるかを調べてみたところ、週末に十分な睡眠をとると夕食後のカロリー摂取は減少することがわかりました。しかし、再び睡眠時間を5時間にすると、カロリー摂取は増えてインスリン感受性も低下したといいます1)。週末の寝だめでは根本的な睡眠不足は解消されませんし、糖尿病リスクも軽減されません。

また、睡眠時無呼吸症候群の方も、睡眠時間の長短にかかわらず良質な睡眠が得られていません。睡眠中に無呼吸状態を繰り返すことで、低酸素血症や交感神経の緊張、酸化ストレスや代謝異常などが起こりやすくなり、結果、高血圧症や虚血性心疾患、脳卒中などの罹患リスクを高めます。

睡眠不足の人は、睡眠に当てる時間をこれまで以上に確保するように努めてください。睡眠時無呼吸症候群の疑いがある方は、病院を受診して、検査を行い、必要であれば治療を受けてください。睡眠に関して不安や疑問を感じたら、かかりつけ医や睡眠専門の医師に相談するようにしてください。

参考資料

1)Ad libitum Weekend Recovery Sleep Fails to Prevent Metabolic Dysregulation during a Repeating Pattern of Insufficient Sleep and Weekend Recovery Sleep(Current Biology 2019年2月28日)

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