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たばこをやめたいと思ったら

医療・健康
2023.1.5

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ニコチン依存症 禁煙できないのは意志が弱いからではない

これまで喫煙がもたらす健康被害について説明してきましたが、ここでは禁煙をお考えの方に禁煙方法についてご紹介します。

たばこには多くの有害物質が含まれており、3大有害物質といわれるものにニコチン、タール、一酸化炭素があります。なかでもたばこの葉に含まれるニコチンは依存性が高く神経毒性があることがわかっています。
たばこを吸うことでニコチンは血液を通って全身に広がります。ニコチンが中枢神経にあるニコチン性アセチルコリン受容体に結合すると、報酬系と呼ばれる神経回路に作用して心地よさをもたらします。そう、ニコチンは強い薬物依存を引き起こすことがあるのです。ニコチンは体内への吸収が早い分消失も早いため、常習喫煙者ではたばこを吸って30分も経つと次の1本が吸いたくなってしまいます。そうこうしていくうちにヘビースモーカーとなり、依存はますます強くなります。

喫煙者が禁煙にチャレンジしたものの挫折したという話はよく耳にします。何度もチャレンジと失敗を繰り返すことで自分の意志の弱さを痛感する人もいるかもしれません。しかし、禁煙を成功させるためは意志や気合だけでは不十分。禁煙治療という適切な支援を受けることがたばこと決別する確実な道となります。「禁煙=ニコチン依存症の治療」と頭を切り替えましょう。

禁煙はストレス? 喫煙もストレス!

「たばこを止めるとストレスになる」と、ストレスを禁煙をしない理由としている人がいます。しかし、喫煙者が置かれた環境を考えてみてください。次のような経験をしたことはありませんか。

◆たばこを吸うために必死で喫煙所を探した
◆小さな箱のような喫煙スペースで他人の煙にうんざりした
◆親しくもない人からたばこと健康について語られて煩わしかった
◆喫煙所でたばこを吸っているにもかかわらず、冷たい目で見られ傷ついた
◆たばこ代がもったいないと感じる日々である


禁煙にはストレスが伴うと思われますが、すでに、たばこを吸うこと自体がストレスフルな時代になっているのです。ならば、禁煙へ舵を切ることも積極的に検討されるのではないでしょうか。

保険診療で禁煙を目指す

2006年4月から禁煙治療に健康保険が適用されるようになりました。
一定の基準を満たした患者さんは、初回から12週間にわたり計5回、禁煙治療に保険が適用されます。
標準的な禁煙治療プログラムは、約3カ月の間に5回の禁煙治療が行われます。禁煙にあたってのアドバイスなど、医師の指導を受けながら治療に取り組みます。
すでに述べていますが、常習喫煙者の多くはニコチン依存症なので、体内のニコチンがなくなるとたばこが吸いたくなります。治療薬には少量のニコチンを含んだ貼り薬を使用して段階的に禁煙を推進していくものと、たばこを吸ったときに感じる心地よさを阻害する作用をもつ飲み薬があります。どちらも保険が適用されます。

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禁煙チャレンジ中のポジティブシンキング

医師の指導を受けながら禁煙治療を行っていても、ときには挫折しそうになることもあるでしょう。禁煙成功に近づくためのちょっとした工夫をご紹介します。

禁煙を失敗させるシチュエーションに「飲み会」があります。しかし、分煙化の徹底によって最近では居酒屋などでもテーブルでたばこが吸えない店が多くなりました。禁煙チャレンジ中の飲み会は「分煙」をしっかりしている店を選びましょう。また、ふだんからたばこを吸わない人と一緒にいる時間を増やすことで一服するタイミングを逃すようにするとよいかもしれませんね。

吸いたくなったときの応急措置としては、次の5つを参考にしてみてください。

1.軽くからだを動かす
(背伸びをしたり、立ちあがって歩いてみたりすることで気が紛れることがあります)
2.冷たい飲み物や温かいお茶やコーヒーなどを飲む
(何かを飲んだり、歯みがきをしたりすることで口寂しさを紛らわすことができます)
3.たばこ以外のことに気持ちを逸らす
(一人であれこれ考えるよりも誰かと会話をすることで気が紛れることがあります)
4.喫煙しやすい場所、たばこと関係のある場所には行かない
(喫煙者と飲みに行く、喫煙所やたばこの自動販売機などからは遠のくようにします)
5.寝てしまう
(どうしてもたばこが頭から離れない場合は寝てしまいましょう)

私たちの記憶というものは、過ぎ去ったことを美化する傾向があります。一服したときの気分のよさなどを考えてしまったら、たばこの健康被害やたばこによる経済損失など、具体的な弊害を思い出してください。
そして、最近ではスマートフォンなどを利用した禁煙サポートがあります。このようなものを利用することで、禁煙への思いも維持できることと思います。一人だけのチャレンジは心許ないもの、家族や友人、知人にも禁煙チャレンジ中であることを宣言して、伴走してもらうようにしましょう。

参考
・厚生労働省「e-ヘルスネット[情報提供]」,喫煙
・厚生労働省「喫煙と健康 喫煙の健康影響に関する検討会報告書」平成28年9月2日
・がん情報サービス,たばことがん
・高橋裕子,三浦秀史「やめたくてもやめられない人の完全禁煙マニュアル」PHP研究所,2004年

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