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俳句で認知症予防できる、の? 

その他
2025.10.27

人生100年時代といわれています。からだもこころも100年元気でいたいものです。今回のコラムは、「俳句」や「短歌」といった日本の伝統的な文芸に触れることで、脳をはたらかせ、認知症予防ができるのではないかというご提案です。

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超高齢社会 からだもこころもすこやかに

日本は65歳以上の人口が総人口の21%を超える超高齢社会です。高齢人口が増えるということは、認知症に悩まされるご本人、ご家族も増加するということです。そして、少子化の日本では、今後介護の担い手不足が高い確率で起こるでしょう。
介護サービスを適度に利用しながらも、自分の足で歩き、自分の頭で考え意思決定し行動したいものです。
そこで今回のコラムでは、大人になってから趣味をもつことで得られるワクワク感、それが認知症予防にわずかながらもつながったら! という願いを込めてお届けします。高齢者とまだまだ自覚できない大人の皆さん、どうぞ一緒にお考えください。

これをすれば認知症の予防になるといった決定的なものはありませんが、外へ出て、こころを動かして、頭を使って、人とも結びつく、そんなものはないか考えてみたところ、ありましたよ! 日本に長く伝わる文芸、俳句と短歌です。今回はより短い詩型である「俳句」を中心にお話していきます。

感じ・考え・人とつながる それが俳句

「俳句」なんて学校で習った松尾芭蕉くらいしか知らないという人も多いことでしょう。でも、大丈夫です。俳句には、「季語」「切れ」「型:5・7・5」というルールがあります。このルールがあるからこそ、誰もが「俳句」をたしなむことができるのです。
「5・7・5」という定型を無視した自由律俳句というものもありますが、ここではそれはいったん置いておきます。

では、俳句をつくる手順に沿って、どのような行動をするのか、また、ことばをチョイスするために、脳のなかではどのような動きをしているのかを考えてみましょう。

俳句は「季語」というそのときの季節の言葉を使うというルールがあります。つまり、季節感を大切にしている文芸といえます。季節の移り変わりは、家に閉じこもっていては気づきにくいですよね。そこで、俳句をつくろうと思えば、外へ出て咲き誇る花の色や香り、鳥の鳴き声、太陽の光、風などを実際に体感して俳句の元になる感情を奮い立たせることになります。俳句のネタ探しのために街や公園、少し遠出して山や海などを歩き回ることが増えるかもしれません。
この時点で、俳句を通して運動をする機会が生まれました。

次に、外出先で出会い、心の琴線に触れたものをことばにします。季節ごとに季語を分類している『歳時記』を開いて、季語選びのために頭をひねります。どのような季語を選ぶかによって、何が詠みたいのかにも通じていきます。紅葉狩りに行った場合でも、あでやかな「紅葉」をテーマにするのか、はたまた、枯れ葉をテーマにするのか、そのとき肌に感じたひんやりした風をテーマにするのかで季語の選び方は異なります。
この時点で、想像力をはたらかせ、わきあがった感情に適した季語を選ぶ。脳のなかでは前頭葉が活発化していると考えられます。

季語が決まり、それに伴うことばが浮かんできたら、そこから俳句の定型である「5・7・5」に整えていきます。「わっ! 難しそう」と思われる方もいるでしょうが、「5音」と「7音」は、日本人にとって昔から馴染みがあるリズムなので、実はなんとなくうまくまとまってしまうことが多いのです。案ずるより産むが易しです。古くは都はるみの「北の宿」という演歌はすべて5音と7音でできています。近頃はカタカナや英語をそのまま歌詞に取り込んでいるので、いわゆる「字余り」となってしまいがちですが、ヒップホップなども5音7音が基本になっているものが少なくありません。
この時点で、「言葉を思い出す」「5・7・5に整える」などの作業により、脳内の「言語中枢」で活発にはたらいています。

さて、こころに感じたことを言語化し、「5・7・5」に整えたら、その俳句を推敲してみましょう。一人よがりになっていないか、他者に伝わるかを考えます。認知症の人では、主観的になりやすいということがいわれていますので、俳句を読む相手の立場に立って、伝わるかどうか考えてみましょう。
この時点で、俳句作品を通して、自らを客観的に省みる練習ができます。

俳句ができあがったら、周囲の人を仲間にして「句会」をやってみましょう。俳句は日記ではなく文芸作品ですから、誰かに読んでもらいたいという気持ちが沸き上がるかと思います。そして、一人では続けられなくても、仲間がいれば継続できるかもしれません。
周囲に俳句仲間がみつからない場合は、カルチャーセンターや地域の生涯学習センターなどで「俳句講座」をみつけて参加してみてはいかがでしょうか。年齢や経歴などとは関係のない趣味の仲間をつくることができます。年齢を重ねていくと、新しい友だちというのは得難くなります。俳句に限ったことではありませんが、「趣味友」をみつけることでこれまでとは違った世界が広がるかもしれません。
社会的なつながりをもつことは認知機能の維持に役立つといわれています。

句会では自分のつくった俳句についての感想や意見を聞き、同時にそこに集まった人たちがつくった俳句を読み、鑑賞して発言をします。最初は、意見を述べることが難しくても慣れてくれば、しっかりした評者になれるはず。

本当に俳句で認知症予防できるの?

ここまで語っておきながら、俳句をつくることで認知症が予防できるという公のエビデンスはありません。もしかしたら、そのような調査がされたことがないのかもしれませんが。

しかし、俳句をつくることで、言語・記憶・社会交流を組み合わせた活動がなされ、そこからもたらされる刺激は、認知症の軽度から中等度の人に対して行われる「認知刺激療法(Cognitive Stimulation Therapy:CST)」の理論に適っています。

俳句を始めるのに、大がかりな準備は必要ありません。『歳時記』と紙とペンがあればよいだけ。最近では、インターネットで季語を調べることができますから、スマホ1つで事足りてしまいますね。
秋の深まりとともに、身近な自然を探しにでかけてみませんか? そして、楽しみながら結果的に認知症予防にも効果があれば素敵ですよね。

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