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年末年始は”飲み”の機会が増えるから 知って欲しい「AUD」

医療・健康
2025.12.22

仲間との楽しい時間を過ごす際に利用することが多いアルコール。適量の飲酒は血行を促進したりストレスを発散したりする効果があるといわれており、人間関係を良好に保つことにも役立つでしょう。しかし、アルコールは「今日はこのくらいでやめておこう」「今日は休肝日にしよう」などとコントールできる範囲で嗜むことが重要です。

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アルコールによって脳のはたらきが変化

アルコールの摂取量が増えすぎると、脳のはたらきが変化して自らをコントロールできなくなっていきます。飲酒の欲求が押さえられなくなり、飲むことをやめられなくなっていくのです。これはアルコール使用症/アルコール使用障害(Alcohol use Disorder:AUD)という精神疾患です。重度のAUDアルコール依存症です。

●5人に1人以上がAUDリスク層
沢井製薬が全国の20~69歳の男女1,000人を対象に行ったインターネット調査によると、アルコール使用障害スクリーニングテスト(Alcohol Use Disorders Identification Test:AUDIT)でAUDのリスクが高い「AUDリスク層」に該当する人は、21.4%にものぼりました。今回の調査では、AUDリスク層は男性に多く、60歳代では37.4%、50歳代では36.1%と高い結果となっています※1

また、ストレス解消のためにしていることを「飲酒」と答えた人の7割以上がAUDリスク層であることがわかりました※1

●AUDが進行するとどうなるの?
AUDは進行性の精神疾患で、多量飲酒を継続していくうちに何をしていてもアルコールのことを考えてしまい次第に飲酒量や飲酒頻度を自らコントロールすることができなくなります。また、AUDはうつ病などを合併するリスクがあり、気持ちの落ち込みが強くなることでさらにお酒を飲むという悪循環を引き起こします。

多量飲酒が習慣化すると、同じ量のアルコールでは酔えなくなり、飲酒量がさらに増えていきます。飲酒を我慢しようとすると手が震える症状のほか、寝付けない、夜中に目が覚めるといった睡眠障害に陥りやすく、頭痛や吐き気がするといった症状が出ることもあります。これらの症状を離脱症状といい、飲酒によって症状が軽減することからさらに飲酒量が増えていくのです。

AUDの進行は、肝疾患やがんなどの病気の原因にもなるほか、脳の萎縮を進めるともいわれています。思考や自発性、性格、理性などをつかさどる前頭葉が障害されることで、周囲から「人が変わったみたい」とみられるようになり、社会生活が困難になることも少なくありません。また、アルコール性認知症のリスクが高まります。

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AUDの治療方法は?

AUDの治療はアルコールを摂取しないことに尽きますが、多量飲酒の生活が続き、すでに依存が認められる場合は一度飲み始めると歯止めがきかなくなってしまうことが少なくありません。また、一時的に断酒ができても再び飲み始めてしまうことが多く、自らの意思だけで回復するのが難しくなります。そのため、精神症状が強かったり、社会生活が困難になっていたり、肝疾患などを発症している場合には専門病院での入院治療が必要となります。

AUD早期の場合、減酒による治療を検討します。飲酒量や飲酒頻度を減らすことで重症化を防ぐことができます。

断酒や減酒は、医師の指示のもと心理社会的治療によって進めていきます。心理社会的治療とは、認知行動療法をはじめとする介入によって多方面から患者さんを支援するもので、各種プログラムがあります。自分の行動や感情のパターンを理解したうえで行動を変えていくことがAUDからの回復につながります。

また、2025年7月には国内で初めて飲酒量低減治療補助プログラムの専用アプリが保険適用となりました。このアプリは研修を受けた医師の指導のもと、AUD患者さんの治療を継続する際の心理社会的治療を支援するもので、飲酒量低減の効果が認められています※2。このほか、医師の指示のもと、補助的に抗酒剤や飲酒量低減薬などの薬物療法を行います。また、離脱症状に対しても薬物治療を行うことがあります。

適度な飲酒と依存症の問題

飲酒は楽しく仲間と交流する場で嗜む程度であれば多くの場合問題にはなりません。しかし、ストレスや不安を忘れるための飲酒は飲酒量が増えやすく、AUDに至りやすくなります。また、眠るために飲酒をしている人も要注意です。飲酒量が増えてしまうと夜間に目が覚めてしまったり、睡眠の質を低下させたりしてしまうことがわかっています。目安となる飲酒量はビールなら中瓶1本(500mL)、日本酒なら1合(180mL)までにとどめ、必ず休肝日をつくることを心がけましょう。

アルコールに限らず、薬物依存やギャンブル依存などの精神疾患は自分でも気づかないうちに進行し、自らの努力だけではコントロールできなくなってしまうものです。「自分は大丈夫」という過信も禁物です。できるだけ早く専門の医療機関を受診して治療につながることが重要であり、そのための気づきは、まず依存症という病気を知ることから始まります。依存症は対象となるものは違えど、誰にでも起こりうる病気だということ、回復には周囲の正しい理解と支援が欠かせないものだということを覚えておきましょう。

*飲酒問題の早期発見を目的に、WHO(世界保健機関)が開発したスクリーニングテスト

出典・参考
※1沢井製薬:プレスリリース「アルコール使用症/アルコール使用障害(AUD)」に関する意識調査
https://www.sawai.co.jp/release/detail/000905.html
※2 日本アルコール・アディクション医学会:CureApp AUD 飲酒量低減治療補助アプリ適正使用指針 (第1版)
https://www.jmsaas.or.jp/wp-content/uploads/documents/cureapp1.pdf
・日本アルコール・アディクション医学会ほか:飲酒量低減治療マニュアル ポケット版【第1版】
https://www.j-arukanren.com/pdf/201911_inshuryouteigen_chiryou_poket.pdf
・依存症対策全国センター:アルコール依存症に気づく
https://www.ncasa-japan.jp/notice/alcoholism
・厚生労働省:健康日本21アクション支援システム~健康づくりサポートネット~飲酒
https://kennet.mhlw.go.jp/information/information/alcohol

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