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敗血症で起こる「筋肉の衰え」、関与する分子を解明
マウス研究で新たな治療法の可能性

医療・健康
2026.4.16

敗血症は、感染症によって過剰な炎症反応が起こり、全身の臓器が障害されてしまう重篤な病態です。こうした炎症などの影響で、筋肉量や筋力の低下が生じることがあります。今回、神戸大学の共同研究グループは、敗血症で筋肉が衰える背景に特定の分子が関わっている可能性をマウス研究で明らかにし、新たな治療につながる手がかりを示しました※1

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敗血症とはどんな病気?

世界で年間約4890万人が発症し、約1100万人が死亡すると推計※2されている敗血症。日本でも敗血症による死亡は年間数万人規模に上ると推計※3されており、重症感染症の中でも大きな課題となっています。

敗血症患者の40〜70%では、全身の炎症反応などの影響により、筋肉量の減少や筋力低下が起こることが知られています※4。この状態は「敗血症関連骨格筋萎縮」と呼ばれています。集中治療室(ICU)で筋萎縮が起こると、ベッドから起き上がることや人工呼吸器からの離脱が難しくなり、患者の生活の質(QOL)が大きく低下します。さらに、長期的に見た場合、この筋萎縮は生存率の低下とも関連しています。

このように重要な問題であるにもかかわらず、「敗血症関連骨格筋萎縮」がなぜ起こるのか、その仕組みにはまだ多くの不明点があり、有効な治療法も十分には確立されていません。

マウス実験と患者データで仕組みを検証

こうした背景から、神戸大学の大野雄康氏、小谷穣治氏らは、炎症に関わる「STAT3」という分子の働きに着目。まず、敗血症を起こすモデルマウスを作り、筋肉の変化を詳しく調べました。さらに、STAT3の働きを抑える薬「C188-9」を投与し、筋萎縮が改善するかどうかを検証しました。また、培養した筋肉細胞を用いた実験でも同様の検討を行いました。

さらに、神戸大学医学部附属病院のICUに入院した敗血症患者を対象に、血液中の炎症物質の濃度と筋肉量の変化との関係を調べ、実験結果が臨床でも当てはまるかどうかを検証しました。

STAT3経路の抑制で筋肉の萎縮が改善

マウスの実験では、敗血症によって筋肉の中でSTAT3のシグナル経路が活性化することが確認されました。さらに、この経路の活性化が筋肉の分解を促し、筋萎縮につながる可能性が示されました。

一方で、敗血症モデルマウスにSTAT3の働きを抑える薬「C188-9」を投与すると、この分子の活性化が抑えられ、その結果として筋肉の分解が減少し、筋萎縮が改善しました。

同様の結果は培養した筋肉細胞でも確認されました。さらに、敗血症患者を対象とした解析では、血液中の炎症物質(IL-6)の値が高いほど、病気の重症度が高く、筋肉量の減少とも関連していることが示されました。

これらの結果から、敗血症では炎症によってSTAT3が活性化し、それが筋肉の分解につながる可能性が示されました(図)。

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図:本研究の概念図(プレスリリースより)
🄫Scientific Reports(2026)(DOI: 10.1038/s41598-026-35815-9)(CC BY-NC-ND)

STAT3を抑える治療が新たな選択肢に?

STAT3の経路を抑える薬は、COVID-19の重症例や関節リウマチなどの治療で、すでに臨床で使用されているものがあります。

こうした薬を敗血症の治療に応用(ドラッグリポジショニング)できれば、「敗血症関連骨格筋萎縮」を防ぎ、患者の生命予後やQOLの改善につながる可能性があります。

今回の研究は、STAT3を標的とした治療が有効である可能性を示すものであり、今後の臨床研究の進展が期待されます。

参考文献

※1.Ono Y, et al. Sepsis-associated skeletal muscle wasting is ameliorated by pharmacological inhibition of the STAT3 signaling pathway in mice. Scientific Reports. 2026; 16:5008.

※2.Kristina E. Rudd, et al. Global, regional, and national sepsis incidence and mortality, 1990–2017: analysis for the Global Burden of Disease Study. The Lancet. 2020; 395:200-211.

※3.Imaeda T, et al. Trends in the incidence and outcome of sepsis using data from a Japanese nationwide medical claims database. Critical Care. 2021; 25:338.

※4.Yoshihara I, et al. Sepsis-associated muscle wasting: a comprehensive review from bench to bedside. International Journal of Molecular Sciences. 2023; 24:5040.

参考資料
国立大学法人神戸大学プレスリリース(2026年3月2日)
-STAT3経路に着目した「敗血症関連骨格筋萎縮」の新規治療法を発見-
https://www.kobe-u.ac.jp/ja/news/article/20260302-67618/

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