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静かな退職という働き方

その他
2026.6.22

ダイバーシティが企業でも推進される昨今、日本人の働き方への意識も大きく変わってきました。今回は、「静かな退職」という働き方について紹介します。日本では仕事を通して成長や自己実現を目指していましたが、それはもう「今は昔」のお話なのかもしれません。

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価値観の異なる企業への新アンチテーゼ

ライフイベントが大きく変化する4月を経て、緊張感と高揚感を抱えたまま働き続けている人も少なくないかもしれません。そんな疲れた自分に気づかないふりをして働き続けているとある日プツンと張りつめていたものが切れてしまうことがあります。そんな状態を「五月病」といったり、「抑うつ」と言ったりします。ストレス過多の現代、メンタルに不調を抱えている人は少なくありません。そんな昨今、自衛の策として、いまだ競争原理が残る企業、自分とは価値観の異なる社会へのアンチテーゼとして「静かな退職」と呼ばれる働き方が増えてきています。

静かな退職は、おだやかに働き続けること

静かな退職とは、誰にも相談せずに突如会社を辞めるというものではなく、昇進を望まず「必要最低限の仕事」だけ淡々とこなす働き方をいいます。
この働き方への移行に拍車をかけたのが、新型コロナウイルスによるパンデミックです。今では耳にすることのなくなった「不要不急の外出禁止」を合言葉に加速度的に広まったのがリモートワーク。多くの人が出社しなくても仕事ができることに気づきました。
生命を脅かすパンデミックのなか、仕事という外へ向かう思考よりも自分自身や家族、近しい人たちの健康、そして幸せを考える時間が増えました。そこから戻ってきた答えに「ワークライフバランス」があり、「静かな退職」という働き方も選択肢の一つになったのではないでしょうか。

また、日本に限ったことではないのですが、経済成長の鈍化、少子高齢化による社会保障への不安などがひしひしと感じられる現代にあって、将来に対して希望をもつことが難しくなっています。それは所属する企業に対しても同様です。漠然とした諦念を抱えていることで実務に向き合うモチベーションが低下してしまうということは考えられます。

必要最低限の仕事って誰が決めるの?

さて、ここで問題となるのが「必要最低限の仕事」の範囲です。特殊な専門領域の仕事ならばその範囲も限定されますが、「必要最低限の仕事」の範囲って本人と周囲では認識が異なることがありますよね。そこで齟齬(そご)が生まれてしまうと、また新たなストレスを感じてしまいそうです。自分では必要最低限の責務は果たしていると思っていても、共に働く人たちにしわ寄せがあれば、不公平感が蔓延してしまい、社内の雰囲気が悪くなることもあります。もちろん、チーム全体のマネジメントをする立場の人がそのあたりの差配はしないといけないのでしょうが、仕事って多岐にわたっていて、雑務も誰かが行わなければ業務に支障が起こることがあります。

静かな退職者へ企業はどう向き合うか

静かな退職という働き方を選んだ理由は人ぞれぞれで、その一人ひとりに異なる背景があると思います。しかしながら、企業側は「静かな退職」という働き方が増えていけば、社内の士気を下げ、業績にまで影響が及ぶのではないかと警戒しています。なぜ、「静かな退職」を選ぶことになったのか顧みることで、従業員にとって働きやすい環境、働き甲斐のある職場というものがみえてくるかもしれません。

メンタルの不調からの休職・離職といった事態を防ぐために、国は労働者50人以上の職場に対し「ストレスチェック」を義務付けています(2028年には労働者数にかかわらず、完全義務化されることとなっています)。企業はこのような制度を利用して働く人のメンタルの状況に気づき、何らかの問題を抱えている場合には適切な対応をすることが求められます。

また、会社に愛着をもっているかどうかも働き方に影響することがあるでしょう。企業側は従業員がどの程度会社に愛着をもっているのかを測定するツール「エンゲージメントサーベイ」を定期的に行うことで、従業員との間のこころの距離に気づくことができます。

このようなことから人事評価や社内制度を見直し、働く環境を整えることで、企業へ期待が持てないことに起因する「静かな退職」を減らすことはできるかもしれません。
近年、ワークライフバランスという考え方を国も推奨しています。家庭や個人の生活を顧みないモーレツな働き方は現代では褒められるどころか非難の対象となります。もちろん会社によっては、どうしても従業員1人当たりの負担が過重となることもあるでしょう。そのような場合も従業員が納得して働ける職場環境の構築が大切です。

一方、従業員側は、現時点での業務内容、職場環境だけで限定的な働き方を選択するのではなく、まずはその後も続く人生を俯瞰したほうがよいかもしれません。1年我慢することで眼前にある景色が違って見えることがあるかもしれません。また、転職というきっかけで働き方のモチベーションが変わることもあり得ます。
もちろん、何に価値観を置くのか、人の生き方はそれぞれです。仕事以上に力を注ぎたくなるものがあるのならよいのですが、ただ、企業への諦めから「静かな退職」を選択しようかと心が揺れている人は、身の処し方を決定する前にまだなにかできることはあるかもしれません。

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参考
財務省 ファイナンス2026,Mar.酒井亮,日比野聡太「コラム経済トレンド141 静かな退職者が秘める可能性について」
https://www.mof.go.jp/public_relations/finance/202603/202603k.pdf
厚生労働省 確かめよう労働条件 ストレスチェックって な~に?
https://www.check-roudou.mhlw.go.jp/study/roudousya_stresscheck.html
内閣府 仕事と生活の調和推進室「カエル!ジャパン通信」Vol.225令和6年3月18日
https://wwwa.cao.go.jp/wlb/e-mailmagazine/backnumber/225/225.pdf

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